やわらかい頭の作り方 身の回りの見えない構造を解明する(細谷功)レビュー
山下です、
「やわらかい頭の作り方」
という本を紹介します。
やわらかい頭の作り方 身の回りの見えない構造を解明する
定価(1400円+税)、株式会社筑摩書房
(発)2015年3月25日
(著)細谷功(ほそや・いさお)、1964年生まれ、ビジネスコンサルタント
先週も細谷さんの著書「メタ思考トレーニング」
を紹介しました。
実は今から紹介する「やわらかい頭の作り方」は
「メタ思考トレーニング」より一年ちょっと前に
発売された本なんです。
ですから、というわけではありませんが、
「メタ思考トレーニング」の方が完成度が高い..
ような気がしました。
なので、先に「メタ思考トレーニング」を
読んでから、余力があれば今回の本も
入手してみてください。
では、「やわらかい頭の作り方」の紹介を
始めますね。
一言でこの本を説明するなら、ズバリ
「人間のタイプを知る」
ための本でしょう。
人それぞれ価値観や世界観は異なります。
ですから、その違いを知ることで視野を広げ、
いろんな人を理解し、受け入れることができる
ようになるでしょう。
もし、あなたが人間関係で悩んでいるなら
この本は結構役立ちます。
原因はよく分からないけど、なぜか
あの人とは上手くいかないな。
でもどうにかしたいと悩んでいる場合、
この本をお勧めします。
具体例が多いので、
「なんだ、そういうことだったのか」
という気づき、発見があります。
ただ、抽象的な話の連続なので、
「で、それがどうした?」
と、ピンとこない所もあります。
内容は理解できても、じゃあそれを
どのように行動まで落とし込めばいいのか
という部分がありません。
人間関係を改善するための本では
そもそもありませんからね。
悪く言えば“まとまっていない”。
良く言えば”応用範囲が広い”。
そんな一冊です。
構成はこんな感じ。
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目次
はじめに
第1章 「心の癖」を自覚する
1思考回路が行動を決める
2始まり方が終わり方を決める
3遠くのものの方がありがたい?
4気づいた時点で解決している
5「単純に考える」方が、実が大変?
6みんな「自分は特殊である」と思っている
7「自分中心」からの脱却
——自分に合わせさせるか、相手に合わせるか
第2章 「物理の法則」は、人間にも当てはまる
1物理的世界と精神的世界
2作用反作用の法則
3心のドップラー効果
——近づいていくるものと過ぎ去ったものは見え方が違う
4どんな仕事にも、上流と下流がある
5侵食する側とされる側は決まっている
6「フラクタル」は身の回りにもある
——一人の世界と七十億人の世界
第3章 「メリット」は必ず「デメリット」になる
1「資産」はいずれ「負債」になる
2「成功」の反対語は「失敗」か?——両極端か中庸か
3一体どっちが正しいの?
4常識は非常識、非常識は常識
5「線を引く」ことの功罪
6「数字」はアイデア貧者のよりどころ
7自由旅行とパッケージ旅行、どちらが「自由?」
8「大括り」か「小分け」か<その1>
9「大括り」か「小分け」か<その2>
第4章 「対比」と「軸」で見えてくるもの
1理論と感情のギャップ
2具体と抽象——「抽象的」だからわからない?
3形から入るか、中身から入るか
4時間とお金は、同じもの?
5「同じ」と「違う」は大きく違う
6決定論と確率論——「万馬券」を買える人、買えない人
7「自由度の大小」の視点を持つ
8仕事を選ぶための意外な視点とは?
おわりに
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全体的に小さめの字ですし、
じっくりと読み込み、さらに
自分の頭で再構築するための
時間が必要がもしれません。
以下、著者の言葉を紹介しておきますね。
「はじめに」より抜粋
本書が目指すのは、このような発想をするために、どのように普段世の中や身の回りの事象を見ていけばよいのかのイメージを、読者につかんでもらうことです。
そのためのキーワードは「目に見えない構造」です。まず前半の「目に見えない」についてです。人間には良くも悪くも、直接的に目に見えないモノやコトを頭の中だけで「概念」として扱う能力があります。言葉や数というのがその代表です。頭の柔らかい人というのは、このように「目に見えない」概念を扱うのが得意な人です。ところが、それは難易度も高いのでなかなか真似ができません。本書ではそれを「可視化」することで、 容易に取り扱うコツを伝えしたいと思います。
もう一つのキーワードが後半の「構造」です。ここで「構造」というのは、複数の事象の間の「関係性」のことをいいます。関係性の典型的な例が「原因」と「結果」の関係、つまり因果関係です。
(中略)
本書で示すように、頭が固いかやわらかいかは年齢とは直接の相関はありません。要は自分の頭が固くなってるかもしれない、あるいは柔軟な発想したいという自覚さえあれば、後は幾らでも方法があります。
「おわりに」より抜粋
「頭をやらかくする」のに最も重要かつ難しいことわなんでしょうか?それは「まず頭の柔軟性がない(失われつつある)自分を認識する」ことだと思います。何事もそうですが、 問題というのは認識した時点でほとんど解決したも同然なのです。
よく言われる話ですが、「コミニケーション力をあげるための本」を本当にコミュニケーション下手な人は読まないし、「ダメ上司のための本」を「本当のダメ上司」は決して読まないのです。逆に言えば何事も「気づいていない」というのが最も重大な問題でことになります。
その観点で言えば、本書を手に取られた方は、その時点ですでに普通の人に比べれば相当「頭が柔らかい」ことを意味します。したがって、あとは具体的な手法を試して実践し、定着化してもらうだけです。
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私が特に興味をひかれたのは、
『第4章の6、決定論と確率論』
の部分です。
「いるいる、こういう人!」
と頷きながら読みました。
すごく簡単に解説すると、著者曰く
決定論とは過去の実績を重視するスタイルで、
確率論とは成功と失敗の両方を考えるスタイル。
それぞれメリットもデメリットもあり
良い悪いの話じゃありません。
でも、少なくとも起業家として結果を出すには
確率論を極める必要があるんですよね。
決定論だと、リスクはとりません。
成功だけを求めて、入念に準備して
結果を得たいと考えます。
でも、それって「絶対当たる宝くじ」
だけを買うようなもので、そんなもの
この世に存在しませんよね。
確率論だとリスクという考えがそもそも
ないので、ただの行動であり、チャレンジ
でしかないわけです。
ある確率で成功もするし、もちろん
失敗だってする。
全てを理解し、納得した上での行動なので
結果に一喜一憂することがありません。
ですから、次々に行動できるわけです、
成功するまで。
そんな内容が詳しく書かれていて、
私には一番響きました。
もちろん他の章でも多くの気づきがあって、
結構やわらかくほぐれたと思います、頭が。
もう少し正確にいうと、ほぐれたというより
「盲点がたくさんある」
という事実に気づいたという感じです。
私なんて特に頭も良くないですから、
知らないことだらけなんですよね。
「第1章の4、気づいた時点で解決している」
でも解説があるのですが、本当の問題って
「気づいていない」
ということにすら気づいていない事実
から生まれるものですからね。
問題にすら気づいてないから、
だから永遠に未解決。
当然と言えば当然です。
じゃあなぜ気づけないかというと
「俺は知っている」
という傲慢のせいでしょう。
知っていると思い込むことで、
見えなくなるんですよね。
ですから、私なりの結論として、
やわらかい頭を手に入れるためには
『肯定的に自分の無能を受け入れる』
必要があるんだと考えます。
歳をとればとるほど、
地位が高ければ高いほど、
知識が多ければ多いほど
「私、ちょっと器用なお猿さん」
「でもそれでイイのだ」
という姿勢を強化するべきなんでしょうね。
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